以前、阪神タイガースの藤川球児投手が
アメリカ大リーグでの経験を次の様に語っていた。
「アメリカ大リーグのマウンドは、固いんで跳ね返される感じなんですよ。
日本人の投げ方だと、下半身主導でいって着地して、
そこから粘って体のパワーを伝えながら、腕の遠心力でしならせて投げるじゃないですか。
1、2、の3で着地して、そこに間があるんですけど、
アメリカのピッチャーは、それがなくて
1、2、の3で、すぐ上半身の筋力の強さで投げる。」
日本で活躍した投手が、大リーグに行って苦労する事に、
ボールの大きさ、乾燥から来るボールの滑りやすさ、
そしてマウンドの固さがよく語られる。
大リーグのピッチャーの投げ方と、日本のプロ野球のピッチャーの投げ方は、
まるで違っていて面白い。
アメリカの大地で生まれた『ベースボール』と、日本の土壌で育まれた『野球』。
日本の土壌について
ある研究者が次の様に言っている。
「…むしろ日本の土は、世界の標準から外れた特異なもののように思えた。
…ヨーロッパ大陸の降水量は数百mm/年、日本の半分以下である。
アフリカ大陸、オーストラリア大陸のほとんどは降水量はさらに少なく、
500mm/年以下の乾燥気候が圧倒的である。
…我が国は世界でも稀な、土壌の乾燥が抑えられ、
土壌が湿、または過湿である期間が長い国である。
…ところで年間を通じて停滞水に飽和されたグライ台地土であるが、
海外ではこれに匹敵する土壌はまず存在しない。
グライ台地土は海外では皆無に近く、我が国の特産といって差し支えないように思われる。」
以下は、大石久和著 『国土と日本人』より
「…ニューヨークの中心部分をなしているマンハッタン島は、
一つの岩からできているといわれている。
東京にしろ大阪にしろ名古屋にしろ、我が国の大都市がずぶずぶといってよいほどの
軟弱地盤の上に存在しているのに対して、
ニューヨークは極めて硬い岩盤の上にその中心部分がある。…」
調べると、こういった話はいくらでも出てくる。
大地という、あまりにも身近に日常的に存在するが故に、
逆にその特異性に気づくのが難しい。
でも、そこでの歩き方は、『ひと目見て日本人と分かる』と
海外の人から指摘される事実は、大リーグのマウンドと投げ方の違いにとどまらず、
日本の土壌の特異性と、長い年月をかけてそれに適応した
日本人の立ち方、歩き方、振る舞い方を物語っているのではないだろうか。
一見すると、世界中何処の都市も似た様な風景を見せる今日だ。
土壌の違いなど、コンクリートの道、コンクリートの建物の上では
まるで関係ない様に思える。
それは土木技術、建築技術の発展と拡散のおかげで、人類の進歩なのかもしれない。
しかし、その上に立つ民族の立ち方、歩き方、振る舞い方という
身体的文化の成立に比べれば、それらは、ほんの、つい、ごく、最近のことである。
大河ドラマで、戦国時代まで遡らなくても、寅さんシリーズの映画で、昭和の風景を見れば、
そのことが良く分かる。 (^_^)